人事のススメ!

これからの時代に求められる人事の考え方を書き綴るブログ

事件は現場で起きている!

5ゲン主義とは?

僕自身、過去には人事・経営・業務のコンサルタント業務を行なっていた経歴を持つのですが、中でも自分の中で一番得意な分野が、業務コンサルタントだと自負しています。今でも、業務コンサルタントとして、クライアントから業務改善・BPO・BPRのご依頼をいただくのですが、クライアント担当者の様々なご意見や情報よりも重視しているのが「現場」です(けして、クライアント担当者を軽視しているわけではありません…)。人事の分野で言うと、給与計算や社会保険手続き事務を担う部門の方々においては、ミスを低減することや生産性(処理あたり単価・社員あたり単価)を企業から期待されている担当の方もいることでしょう。昨今では、社員数が多い企業ですと、労務処理を集中化・標準化・自動化することで、このミス低減や生産性向上を目的として、シェアードサービス化もしくはアウトソーシングに踏み切る企業も多いかと思います。ただし、集約したからといってミスが減るかとか生産性が高まるかというと必ずしもそうでもなくて、一箇所で対応ができるということに過ぎません…。

ミスや遅延には必ず原因があり、その原因をいかに素早く解消するかが肝であり、それは「現場」でしかできません。この記事ではあのトヨタやホンダでも実践している「5ゲン主義」をご紹介し、広く捉えると人事として組織運営や企業運営のヒントをお届けできればと考えています。最近では、インターネットによる通信環境が整備され、また新型コロナウィルスの影響も相まって、ほとんどのことをオンラインでできるようになりましたが(もちろんこの動向には大賛成です)、オンラインだけでは見えてこないことも多々あるのだと再確認・再認識できるようにもなったと思っています。「やっぱり対面がいい」と古株の方々がのたまうのも、あながち間違いとも言い切れないとも思っています。その見えてこないことを見るために、再注目されているのが今回ご紹介する「5ゲン主義(三現主義+二原主義)」なのです。

 

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三現主義とは?

まず、三現主義とは、問題解決を行う際に注意すべきスタンスを表す言葉を指します。何か問題が起きた際には、机上の空論で話を進めるのではなく、以下のことを重要視すべきだという考え方です。

 

  • 「現場」に出向くこと
  • 「現物」に直接触れてみること
  • 「現実」を見ること

 

この「現場」「現物」「現実」の3つを総称して、「三現主義」と呼ばれています。三現主義の理念は、主に生産分野での品質管理などで重視される考え方ではありますが、オペレーションが発生する部門であれば、どこでも活用することができます。また企画部門においても、同じことが言えて、この考え方に立てば、机上の絵空事ではなく、解像度の高い企画になることでしょう。

例えば、皆さんが大きな工場を経営していると考えてみてください。そして、想定以上の不良品が発生してしまっている状況だと仮定します。皆さんは問題を解決しなければならないと思い、現場責任者に原因の特定を指示しました。すると現場責任者からは「生産機械が古いことが原因だ」と意見してきたのです。そこで、企画者であるあなたは多大な予算をかけて、生産機会を新調しました。ですが、不良率は一向に下がりません…。そして結果的に、生産機械の新調し多大な資金を使ってしまった上で、不良品は無くならず、皆さんの会社は倒産してしまいました…

これは、三現主義を軽視した場合の事例です。しかし、もし仮に、皆さんが三現主義を重視していたら、結果はどうなるでしょうか? 例えば、現場責任者に原因の特定を指示するだけではなく、皆さん自身が生産「現場」に足を運んでいたとします。そして、不良品の「現物」をその目で確認しました。すると明らかに機械の不調では現れないような不良が出てきたのです。そこで、皆さんは工場で従事する社員の作業態度を見てみると、現場責任者が従業員をまったく管理できていないという「現実」を知ることになるのです。つまりは、不良品の原因は機械ではなく、人にあったと気づくわけなのです。

これが三現主義を重視した場合の例です。もちろん実際には現場に行った結果、本当に機械の不調であるケースもあるでしょう。しかしそれはあくまでも結果の話であり、実際にその目で見て、原因を特定しているかどうかという点に大きな意味があるのです。いかがでしょうか? 特に人事部門などのコーポレート職が陥りがちで、多くの企業で大小あれども同じようなことが起きているのではないでしょうか? これからますますオンラインを使った会議が増えることは間違いありません。ですが、この三現主義の考えを念頭に置いているかどうかで、取り組みや成果が大きく変わると、是非考えていただきたいとも思います(再三になりますが、個人的にはオンライン会議等には大賛成です。)テレワーク中心の働き方にシフトしていく今だからこそ、逆にこの視点を持っているかが、より一層大切になると思慮しています…

 

 二原主義とは?

5ゲン主義とは、説明した三現主義(「現場」「現物」「現実」) に加えて、二原主義(「原理」「原則」)を重視した考え方です。ちなみに、「原理」「原則」の意味は、以下の通りです。

 

  • 原理:物事が成り立つ法則やメカニズム
  • 原則:多くの場合に当てはまる規則や決まりごと

 

含めて、5ゲン主義を改めてまとめると、以下のようになります。

 

  • 「現場」に出向くこと
  • 「現物」に直接触れてみること
  • 「現実」を見ること
  • 「原理」を理解すること
  • 「原則」を知っておくこと

 

例えば、ビジネスをする場合、競合の多い市場で商品を売ってもなかなか売れませんが、強豪のいないブルーオーシャン市場で商品を売ればたくさん売れます。これは、需要と供給のバランスによるものです。つまり、供給の方が多い市場ではなかなか売れなくて、需要の方が多い市場ではよく売れるというメカニズムが成り立ちます。これがいわゆる「原理」です。また、例えばクレープ屋さんを始めようとしたとき、男子校の前と女子校の前のどちらに店を構えた方が良いと思うでしょうか? この場合、多くの方が女子校の前に店を構えるべきだと考えると思います。なぜならば、クレープを買うのは圧倒的に女性が多いからです。もちろんクレープが嫌いな女子もいますし、逆にクレープが好きな男子もいます。しかし多くの場合、女子はクレープが好きで、男子はそうでもないという規則性が当てはまります。これはメカニズムではないのですが、一定確率で発生する規則性です。これがいわゆる「原則」です。

最近では、三現主義だけではなく、この「原理」「原則」を足した5ゲン主義を重視する企業も増えてきました。メカニズムや規則性を理解することで、多くのケースに当てはめて、例えばマニュアルやルールにすることで、それぞれが考えたり決めたりすことを不要にし、効率性を高めるという趣旨があります。要は、一度起きた事象を元に、問題解決をすれば、同じことが起きないように、多くのケースで当てはまる最適解を標準化しようという発想です。冒頭の話にも戻りますが、多くの企業が集約化・自動化とともに、運用などを標準化(ルール化)するのは、この為なのです。

 

5ゲン主義 管理の基本 考え方編

5ゲン主義 管理の基本 考え方編

 

事件は現場で起きている!

(少し懐かしいですが、)映画「踊る大捜査線」で主人公:青島が叫ぶ「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きているんだ!」というセリフが当時大流行していました。僕自身、本当にこの通りだなと思っています。要は、「現場」を自分の足で訪れ、自分の五感で感じろということです。実際の作業を、自分でやってみるということです。もちろん、企業には役割があり分業をしていますので、常にとなると非常に非効率なこともあるでしょう。ですが、要所や定点で現場に訪れることで、見えてくることは多分にありますし、逆に訪れないならば、経営やコーポレート部門と現場の認識格差は広がっていくと思った方がいいと危惧します。事件は「現場」で起きています。本当に…

前述の通り、企業には役割があり分業しているという利点は理解しつつも、机上論と現実論は異なります。これを繋げるのが、マネジメントやコーポレート部門の役割の一つであると、一方では思います。役割として目指す姿を担うということは、未来のことを考える作業の為、机上の空論になりがちです。

 

  • 目的は?
  • 目標は?
  • 現実は?
  • 問題は?
  • 原因は?
  • 真因は?
  • 課題は?
  • 計画は?

 

などなど、未来の目指す姿を考えず、現実だけをとらえているのは、マネジメントやコーポレート部門の役割を果たしているともやはり思いませんが、机上の空論だけを見て、具体的な「現場」や「現実」に目を向けないのもまた然りだとも思うのです…

 

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