人事のススメ!

これからの時代に求められる人事の考え方を書き綴るブログ

「正社員になりたい」だけでは、会社は採用しない!

早く正社員になりたい…

採用活動をしていると、まれにこういう動機だけの方と遭遇する。もちろん誰しも不運・悲運はあるので、フラットに合否は判定するし、一方で人格までを否定することはないのですが、やはり残念な気分にはなってしまいます。新型コロナウィルスの影響で、来年度新卒の有効求人倍率は下がり、第二の就職氷河期だとも言われ始めていますので、挫けず主体的な生き方を期待したいという意図で、記事にしたいと思います。

応募者は30代前半の男性、独身。最初の就職先を5ヶ月で辞め、ある分野の専門学校へ。学んだことを活かせぬまま、派遣社員として金融機関の事務センターへ。数年後そこで覚えた仕事を活かして正社員になるべく転職する。希望者も多い職種であるため、正社員採用の道は厳しく、またも派遣社員としてデータ入力の仕事へ。そして、労働者派遣法の改正により、最長でも3年しか同じ派遣先では働けず、いくつかの派遣先を転々とする。派遣先で正社員登用の希望も叶わず、今回の応募に至ったというのが、彼の略歴…。志望動機を尋ねると「正社員採用だから」とのこと…。面接官としては硬直し、しばし沈黙してしまうが、「あなたにとって正社員の意味とは?」という質問に対し、彼は「お金と安定です。仕事は二の次です」との回答…

このやりとりで結果はすでに見えているのですが、働く意義を見出せずにここまできている本人の考えに、僕は愕然としてしまいます。彼は正社員になるために就職活動を続けているのです。もちろん不運・悲運もあると思うので、その点は考慮に入れたとしても、その動機だけだと、よほどデマカセでも言わない限り、正社員での就職は困難でしょう。仮に、そのデマカセが上手くいったとしても、後で大変な目に遭うことでしょう。彼は、ある意味では素直に、「未経験で正社員採用をしてくれる会社を探している」と正面切って話をしてくれましたが、それだけでは、やはり会社は採用することはないでしょう。順序が違うのです。

会社に魅力を感じてくれて、やる気があるなら未経験でも正社員採用はします。ですが、未経験者が経験者に勝つには「やる気」「元気」「動機」くらいしかありません。彼は、順序が異なるようでして、未経験であることを謙虚に受け止めていないように僕には思えました。動機をアピールしてもらえるかと手を差し伸べたのですが、「入ってみないとやる気が出るかどうかはなんとも言えない」との回答。やはり違うと思うのです。結局のところ「早く正社員になりたい」という動機のみなのです…

 

こんな契約社員ほど正社員登用から落ちこぼれる。なぜか正社員になれないあなたへ。30分で読めるシリーズ

こんな契約社員ほど正社員登用から落ちこぼれる。なぜか正社員になれないあなたへ。30分で読めるシリーズ

 

正社員採用は投資であり、リスクを伴う

会社や事業への動機はなく、正社員になることだけを目的にして、それを伝える。もちろん、気持ちは理解するものの、非常に寂しく、残念な気持ちになりました。正社員採用は、会社にとっては投資の意味合いが大きく、「正社員の利点だけを求める人材」はリスクに化けます。正社員の意味をここまで掘り下げるのに意味があるのかと、求職者の方には問われるかもしれませんが、人を雇うということはそれくらい責任の重いことなのです。「権利」と「義務」は間違わないようにいきたいものです。

労働人口が減るこのご時世に、正社員に応募いただけるのは非常にありがたいのですが、正社員になる為の応募にすんなりと「どうぞ」と言ってあげられないのも本音なのです。人生の中で、2度3度と転職するのも当たり前の時代になりました。後払いの退職金制度も廃止する企業も増え、果たして正社員という形態が徐々に無意味なものになりつつあるというのも十分理解した上ではありますが、一方で定年も60歳から65歳までが義務となり、2021年4月には、70歳まで延長することが努力義務となってきます。安定・安泰だけを求めて、ただ会社にしがみつく社員が増えてしまうと、会社を維持するためには、誰かがその分働くことになるのです。そして、その誰かは「ぶらさがり社員」「働かないおじさん」を養うことに嫌気をさして、企業を離れてしまうことになりかねません。逆に、正社員が無意味になっていくからこそ、安定・安泰を目的にし、価値発揮を二の次に考える社員が増えるのは、組織としてはなんとしても阻止しなければならないのです…