人事のススメ!

これからの時代に求められる人事の考え方を書き綴るブログ

これからの人事に求められる事とは?

2月2日は「人事の日」!

僕も知らなかったのですが、2月2日は「人事の日」だそうです。株式会社HRビジョン(旧:株式会社アイ・キュー)という会社が運営する「日本の人事部(2月2日は“人事の日”|日本の人事部)」というメディア内で制定したらしいのですが、人事を担う一人として、世の中において「人事」というものの重要性が高まっていると実感でき、本当に嬉しく思います。

せっかくなので、これを機に、「これからの人事には何が求められるのだろうか」ということを、悶々と考えていました。本当は「人事の日」である昨日中に記事をアップしたかったのですが、悶々としすぎた結果、記事に起こすのが、今日になってしまいました。というのも、難しい…。というのが本音です。ですが、少なくとも、コーポレート部門の中で人事・HR機能が一番重要になるのでは? というのが、まず僕の私見です。これは、経営資源の観点から考えると、ヒトが備わればその他のモノ・カネ・情報はなんとか調達できるからというのが理由であり、僕なりの帰結です。

 

  • モノ …カネで買える。そもそも買う必要が減ってきている。モノは売れない。
  • カネ …資金調達が容易になっている。ヒトがどう使うかが重要になっている。
  • 情報 …カネで買える。そもそも過去の情報は無意味になってきている。

 

ヒトが揃えば、モノも必要あれば作れるし、カネは調達できるし、情報はヒトのネットワークから仕入れることや組み合わせの中で生み出していくものに変わるとも思うのです。結論を述べるならば、「優秀なヒトを採用する」ことが、これからの人事に求められる事と言えるのではないかと考えます。もちろん、極論を言えば、企業それぞれにおいて、人事に求めらる事は異なりますし、規模で言うと、100名までの小規模会社は「とにかく採用」が課題ですし、100-1000名の中規模会社は、歪みを解消しながら「組織風土」を創ることが求められるし、1000名を超えるような大規模会社では、「ガバナンス」や「生産性」が市場からも求められる事でしょう。ですが、規模感の各フェーズにおいても、それぞれの課題を打破するのは「優秀なヒト」でしかないというのが、僕が導き出した結論でもあります。

 

「優秀なヒト」とは?

ここからが拡散しがちなテーマではありますが、「優秀なヒト」とはどういう人でしょうか? なかなか正解がなく、悶々とするのですが、このあたりの問答を行うと、人事としての道筋がはっきりしてくるとも思います。やもすると10年前までは、真面目で努力できる人だったのかもしれません。各社のコンピテンシーにおいても、規律を守り、従順で、漏れなく筋道を立てられる(=つまりは論理的で)人が10年前までは「優秀」と定義していたことでしょう。なぜならば、こういう人が成果や実績を出せていたからだと思うのです。トップのやりたい事を叶える為に、過去の情報を調査・分析し、一番効率的な計画(筋道)を立て、それを愚直に遂行できる人が、最も結果を出せていたのです。10年前までは…

ですが、時代は大きく変わりました。インターネットやスマホの普及、グローバリゼーションの拡大に伴い、ビジネスにおける前提条件や競争相手が一気に様変わりしています。業界の垣根を超えて、古い業界・古い慣行が見事に破壊されているというのも事実でしょう。さらには、新型コロナウィルスもそうですが、予想だにしなかった事も突然起きてしまうといった、まさにVUCAと呼ばれる時代です。正解がない中で、いかに早く、市場に新たな価値を提供する事や、変化がある中でも柔軟に適用することが求められる時代です。当然、優秀なヒトの条件も10年前とは様変わりしています。トップのいうことが必ずしも正解ではなくなりました(予見不可能になりました)し、過去の情報は変化の激しい時代においては参考程度にしかなりません。計画を立てたとしても、複雑な状況下では、その変化に適応せねばならず、計画を立てる工数の方が無駄になることも多くなることでしょう。そう考えると、「優秀なヒト」に求められる要素は、以下のようなことなのかなとも思えてきます。

 

  • 変化に耐性があり、適応できること
  • 常識に囚われず、常識を疑えること
  • 強い意志を持ち、考えながら行動できること
  • 支持するフォロワーが、多数いること

 

こういった要素を持ち合わせ、現状を打破する事や、まだ世の中には存在しない価値を生み出せる人が、今の時代には「優秀なヒト」と言えると思うのです。このタイプの人は、10年前には会社などの組織では活躍できませんでした。むしろ「変人」として扱われ、評価が低かった層でもあります。どの会社にも一人二人いるとは思いますが、会社としては「すごいけど、扱いづらい」タイプの人です。まだまだ、閉鎖的な会社では、このタイプを受け入れられず、結果退職に至り、独立・起業するようなタイプでもあります。思い返してみると、過去に読んだ堀江貴文さんの著書「あえて、レールから外れる。逆転の仕事論」に出てくる人なんかがそうですね。読んでいただけるとわかりますが、この本に出てくる人たちは、10年前には(今でも?)会社組織にいなかったタイプなのです。

 

あえて、レールから外れる。逆転の仕事論

あえて、レールから外れる。逆転の仕事論

 

「優秀なヒト」をエンゲージできる組織とは?

では、このようなタイプの人たちを、いかに採用し、いかに動機付けし、いかに居続けさせるにはどうしたらいいのでしょうか? この問いが、人事としては大きな課題であり、僕の考える「これからの人事に求められる事」だと思うのです。これについても正解はないものの、平たく言うと、過去の人事制度・人事規程・採用条件…etc. を全て見返し、見直す必要が出てくることでしょう。人事の仕組みは、全ての仕組みが連関して影響していることが多いので、自ずと全てを見直すことになるとも思います。

まずは手始めとしては、採用の条件から見直す事をオススメします。頭の固い企業では、一気に人事制度を変えることには躊躇もあることでしょう(躊躇してる時点でこの企業はおしまいなのですが…)。採用条件の見直しであれば、徐々に新しい定義の「優秀なヒト」(以降「ニュータイプ」と表現)が増えることになるので、硬直した組織でも比較的受け入れやすいとも思います。10年前の採用条件はこの際キッパリと捨ててしまい、上記に記したような人物像を「ニュータイプ」として要件に採用するといいかと思います。さらに付け加えるならば、何かに尖りがある(日本一・世界一)人については、その他の要件は、極端言うと0点であったとしても採用するべきです。その尖りをいかに活かすかが、新しい価値を創出することにつながるからです。

ニュータイプ」に採用基準を変えると、現場からの反対意見は必ず出てきます。多くの人は、今まで通りの状態を維持したいという思考が働くので、何かと理由をつけて反対することとなるでしょう。結論づけると、この類の反対意見は無視して受け流しておけばいいのですが、柔和に事を進めたいならば、「今までと同じこと」が、未来には起きない事を丁寧に説明してあげるといいかと思います。そして企業が生き残る為には、変革できる人材「ニュータイプ」を採用し、そしてエンゲージする必要がある事を切々と説明していけば、若年層を中心に、徐々に理解を示してくれることと思います。おそらく最後の最後まで反対する人もいるかとは思いますが、そういう人は流石に見切りましょう。残念ではありますが、いずれ変化に耐えられず淘汰されてしまう人たちです。本人の為にもつながる事を提言・助言しても、変わろうとしない人に対して、時間を割くのはやめた方が賢明だとも思います。極めて非効率です。

ニュータイプ」を採用し、現場に徐々に変化の必要性を訴え、浸透してきたら、いよいよ本丸である人事制度・人事規程の改定です。少し脱線しますが、組織の雰囲気づくりは、やはり仕組みによって作り上げられてくるとも思います。これが「組織開発」と言われるものであり、寝技のように、説明・理解を高めていくことは重要ではありますが、一方で、仕組みを変えれば、自ずと一気に「組織風土」は変わっていくという考え方に立つといいのかもしれません。人事制度は、各社の事業によってカラーが出るものですが、大きな方向性としては、以下を意識して変化させていくといいかと思います。

 

  • 管理・統制  →  自律
  • 減点評価   →  加点評価
  • 総合評価   →  一点豪華主義
  • 公平性・調和 →  区別・差別(意図的に差をつける)
  • 閉鎖的    →  情報の開示(オープンコミュニケーション)
  • 階層的    →     フラット
  • チームワーク →     インクルージョン・摩擦

 

様々な要点ありますが、大切なニュアンスとしては、平等という観点は念頭に置きつつも劣後させ、意図的に報酬を中心に差を大きくつけると、道が切り拓けてくると思います。逆に言うと、そうしないと、本当に尖った人「ニュータイプ」は、より条件のいい会社に流れていくし、個人で独立するなど、逃げられてしまいます。管理・統制ではなく、自律というのもその意味では重要で、得意なことにどれだけ専念させてあげられるかも肝になるとも思います。「すべからく自由にする」とはまた異なるのですが、自律を促し、「働きがい」を訴求し続け、「働きやすさ」の選択肢を増やすということも、その次の工程では、自ずと考えざるを得ないことになるでしょう。

と考えたときに、やはり「ティール組織」に近づくんだな…とも思います。僕の思考性なのか、世の中の変化の行く先が「ティール組織」なのかは、議論の余地がありますが、組織が生き残る為に「ティール」な状態にいかに近づけるか、リスクガバナンスを経ながら、徐々に管理・統制で縛るのではなく、規律を最小化させていき、その絞られた規律を破った際には排除する方向性にシフトさせるのが、強い組織を創ることになるとも強く思います。「優しいけど、実は厳しい人事」ではなく、「厳しいけど、どこか温かい人事」とでも言うのでしょうか、これが、これからの人事に求められることにもつながります。これからの人事は、経営の根幹を担う存在として、経営資源の最重要資源である「ヒト」をどのように獲得するか、維持し続けるかを考え、それが実現できる組織に変えることこそ、「これからの人事に求められる事」なのです。

 

tsubakuro-hr.hatenablog.com

 

笑顔でいれば、可能性はきっと広がる!