人事のススメ!

これからの時代に求められる人事の考え方を書き綴るブログ

世代間格差による「言語障害」と「欲望障害」

老害はさておき…

東京オリンピックパラリンピック大会組織委員会森会長が辞任した際に発した「老害」という言葉に対して、なんとも世間では賛否両論賑わいを見せている。「女性蔑視も高齢者蔑視もダメ」という意見から、「そもそも高齢者という属性で物事を考えるのがダメ」といった意見まで、個人的には見苦しい意見も多々あるが、ダイバーシティやアンコンシャスバイアスについて、世間が実例をもって社会で議論ができる機会となったのは、人事マンとしては嬉しい限りである。当然、女性や高齢者などの属性を一括りにして、ステレオタイプに嵌めてしまうことや、「話が長い」「老害」といった言葉で論拠ない発言をしてしまうことには反対ではあるが、背景には世代間格差の問題が大きく関係しているのではないだろうか?

 

明らかな世代間格差

事実、金と暇を持て余す高齢者がいる一方で、働けど働けど生きるのが精一杯の若者がいる。統計的事実としてこの世代間格差があるのは、なんとかならないものだろうかとも思います。経済=金回りと考えたときに、団塊世代以上の方々が蓄える資産をどのように市場に流通させる火が、日本が立ち直る起点となる気はするし、何よりも若者たちが将来に希望を持てないでいる閉塞感は、やはり幸福を重視する僕にとっては気がかりでならない。今の若者層の平均年収が300〜400万円だとすると、年功序列ももはやなくなった今、多くがこの年収水準でサラリーマン人生を終える可能性もある。一生涯の収入で見ても、そうした場合は1億円強がいいところだろう。(もはやこれも一般的だが)夫婦共働きでやっと家が買え、子どもが養える水準だ。一方、既得権益を得た年配者を多く抱える企業では、若者層に賃金を掛けられずいて、必要最低限で賃金設計を考える始末となる…。当然にして、結婚や出産を差し控える考えも高まり、少子化や未婚者の増加を招くということにつながってきているのです。要は、時代を理由に資産を得た高齢者から市場へお金を流通させ、若者が結婚や出産ができる水準に賃金を引き上げないと、人は減り、希望は持たず、国家が崩れていくのだ…

 

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日本経済が低迷する理由

日本の成長率は、報酬水準(昇給率)を見ていても、良くても2%そこらだろうか。中国やインドの成長率は10%、アジア全体を見ても7%台の中、日本はアジアの中でも定位に位置している。だけれども、日本人は皆、まだ日本は先進国だと思い込んでいるのはなぜだろうか? 多くの高齢者が過去の成功体験によって、日本はいまだに成長していると錯覚し、欲望のない和魔物は、必要最低限の生活を確保する為、リスクは犯さない。個人的には、日本が成長低迷する理由には大きく2つあると考えている。ともに世代間格差の話である。

 

言語障害」と「欲望障害」

一つは「言語障害」である。世代間で言葉が通じないのです…。昨今、グローバルでの成長株の多くはITを駆使したレバレッジの高い取り組みをしている企業である。その成長スピードは計り知れない。だが、「言語障害」を抱えた高齢者は、このことを理解できない。けして高齢者に対して偏見を持つつもりはないですし、高齢者全てがそうだと言うわけではありませんが、統計的傾向としては、その傾向は明らかにあると思います。しかも、企業の上層部は、この類の「言語障害」を抱える人が、名前を連ねていることが多いのも、厄介なのです…

 

  • ITとは、コンピューター・インターネットまでの認識だし、
  • レバレッジなんて理解されないし、
  • 下手すりゃ努力せず楽することと解釈されて否定される始末…

 

終いには、理解できるようにわかりやすく説明しろと叱られてもしまうが、きっといくら詳細に説明しても、余計にわからないことだろう。勉強する努力をしない人に、いくら詳細に伝えても、理解はできないのである。理解が早い若者は、この「言語障害」に悪戦苦闘しますが、勉強しない人・努力しない人には、一生理解できない為、努力しない人が偉そうにし、努力する人が疲弊する構造ができてしまうのである。さらには、変化のスピードが早く、今の時代では通用しない過去の成功体験を語られ、嫌気すらさしている。「今、通用しないので、ITを駆使しよう」って話をしているのに、努力しない人に「楽せず努力しろ」みたいな言い方をされて、話が矛盾や逆行してしまう。そして、若者たちは、伝えることを諦め、「欲望障害」を起こし、クビを切られない程度に・上司に嫌われない程度に仕事をし、そうした企業は衰退してしまうのである。「欲望障害」とは、けして高みを目指さず、目先の生活だけで満足してしまうことでもある。もちろん、一つの価値観ではあるので、一概に否定するものではありませんが、服も・車も・外食も・恋愛も、求めない若者は、お金には失着はしません。そうすると、企業が、報酬で若者を動かそうとしても、動かないのです。

 

人事は何をすべきか?

こうした大局観の中で、人事は何をすべきだろうか? 企業が生き残るには、世の中の変化への対応が前提だとする(そうではない事業もあるとは思います)と、いかにこの世代間格差を断ち切るかが、肝になってくるとも思うのです。

 

  • 報酬だけではなく、MVVなど理念共感を促し、エンゲージを高める。
  • 変化に適応できる自己研鑽を促す。
  • 成果に応じて、報酬格差が生まれるよう報酬制度を設計する。
  • 降給・降格・退職勧奨など、Down・Outの基準も設けておく。
  • ダイバーシティリテラシーを高め、「聴く」力を伸ばす。
  • 年配者をリーダーに据えることに固執しない。

 

などなど、一例ではありますが、世代間格差を無くし、真に成果主義=つまりは価値がある人が報われる仕組み・仕掛けを講じておくことが、人事には求められてくるのです。年功序列はないと宣うが、実質まだまだ年功序列つまりは生まれた時代・入社した時期により優遇が生まれている企業も多いと思います。その不要な優遇は、「言語障害」「欲望障害」を生み、組織を衰退させてしまうということを強く意識しなければならないのです。