人事のススメ!

これからの時代に求められる人事の考え方を書き綴るブログ

「今どきの若者は…」とボヤく前に管理職が本当にやるべきこととは?

人材育成の本当の意味とは?

管理職・先輩諸氏の皆さん、人材育成の意味を本当におわかりでしょうか? 当然、様々なお答えがあると思いますが、突き詰めると答えは2つです。

 

  1. 技術・技能を伝承すること
    長い間、組織に根付いた技術や技能の伝承を継続するために人材を育成します。

  2. 新しい価値観の流入により、時代の変化に適応すること
    新しい価値観を流入することで、変化する市場環境に適応する組織とするためです。


この2つで間違いなく言えることは、

  • 教育者のコピーを作ることではない。
  • 教育者が使いやすい人材を作り上げることではない。


この2つを押さえていただきたいものです。勘のいい方はおわかりかと思いますが、この2つは教育者(個人)主語なのです。上記に挙げた人材育成の意味は、組織や場合によっては市場(社会)が主語なのです。ここまで言えばお解りかと思いますが、管理職・教育者の役割にこの人材育成は不可欠です。若者が少々(言葉が不適切かもしれませんが)使いにくいご時世なのは承知していますが、若者を悪くいう前に考えること、やることがあるのではないでしょうか…。主語が教育者(個人)となる管理職は、当然自分の為に人を育成することが主眼になるので、自分にとって都合の悪い言動をする若者をボヤきたくなるのでしょう。

記事『世代間格差による「言語障害」と「欲望障害」でも触れましたが、働く期間が長くなり、時代の変化が急激に加速する時代においては、同じ企業で働く年齢層も多層化していきます。同じ価値観でいられるということは、むしろ稀である為、「今どきの若者は…」とボヤくことに繋がっているのでしょう。でも、逆にいうと今どきの若者からも「今どきのシニアは…」とボヤかれていると自覚した方がいい。なぜ、組織が新しい人材を採用し、育成するかを考えると、これからの時代に向けて、新たな価値観・発想を組み入れ、時代の変化に適応する対応力を組織として備えていくからだと考えると、「今どきの若者は…」といったボヤきは、人材を採用・育成する意図からすると逆行する発想なのです。さらにいうと、(年齢だけではなく)様々な価値観が多様化するからこそ、個々人は究極的にはユニークな存在であり、個々人の価値観を理解し、認め、自らの気づきに転嫁することが、ダイバーシティの本質だとも言えます。まずはこのことを「人材育成」の本当の意味であると位置付けることから始めましょう。

 

tsubakuro-hr.hatenablog.com

tsubakuro-hr.hatenablog.com

 

成長の瞬間 / 覚醒

上記を踏まえての前提ではありますが、その上で人を育てるという作業は非常に難易度が高く、なかなか成功の糸口が見出しにくいというのも事実でしょう。多くの企業が人材育成に苦慮し、研修などの仕組み・仕掛けを講じているところかと思います。果たして研修にいかほどの効果があるのか、疑念を抱く人も多いことでしょう。個人的な見解を述べるのであれば、まず効果はあります。ですが、はっきりと言えるのは、100%全員に効果はなく、かつ即効果が生まれるかというとそうではないと言い切ります。どんな人にも、成長の瞬間はあります。が、その成長の瞬間は、突然であり、覚醒と言ったほうが、個人的にはしっくりきます。

 

その覚醒の条件は、

  • 経験により
  • コツ=法則をつかみ
  • そのことを認識し
  • 意図的に使える


この4つの工程の体得だというのが、人材育成の条件式と言えるでしょう。それは、たとえ研修を受けなくとも、努力しなくとも、知識を得たわけでもなく、教わることもなくとも、突如としてやってくることになるのでしょう。場数によって自ずと身につくことも多く、が故に「研修なんて無意味だ」との意見が出てくるのも理解はします。では、なぜに研修や人材育成を行うかというと、この確度を高め、能動的に覚醒を生み出すことに近づく(人もいる)からと思うのです。経験により個人がその法則性を見出す前に、法則性を研修・教育で伝えてあげることにより、4つの工程の体得を早める効果を期待してのことなのです。なので、いくら伝えたとしても、その法則性を理解できない人もいれば、自身には合わない人もいるだろうし、伝えても認識したり意図的に使わない人も出てきます。それが、研修・人材育成の効果が、100%全員に有益ではなく、その効果が目に見えるのが、個人により時間差が生まれる要因なのです。

 

人材育成における管理職の役割とは?

以上を踏まえると、管理職やマネジメントの役割とはなんでしょうか? 上記の4つの工程を素直に実体験に導くことだとも言えます。人によっては素直に指導や助言を聞き入れない部下もいることでしょう。「今どきの若者」には異なる価値観があり、過去の成功体験が100%有益だとも言い切れません。さらには、心底素直に助言・指導を受け入れられる心の準備ができていないといことも多々あるというのが実態だとも思うのです。管理職は、高飛車にならず、傲慢にならず、自身の役割責任として、

 

  • 経験させること
  • 成功体験の共通点を見出すこと
  • 共通点を示唆すること
  • 使える機会を与えること

 

が、自身のやるべきことだと捉えて、(本人にもわからないように)こっそり手助けするのが良い結果を生む導きになると考えるといいでしょう。上から目線で、教科書通りに指示・助言をしても、素直な受け取りはなかなか難しいものです。場合によっては、反発などもあるのかもしれません。が故に、人材育成は非常に難しいのです。

「失敗は成功のもと」という言葉がありますが、実はこれも4つの工程の裏返し表現でもあります。失敗にも共通点があり、それをしなければいいという教訓です。まずは、「成功は成功のもと」と捉えて、その成功の共通点を教えるのではなく、気づかせる・考えさせるというのが重要になります。しかも、本人が望んで気づく・考えるように仕向けるわけです。人を育てるのって、面倒で、難しいですね。でも、これができる管理職・マネジメントは、どの企業に行っても、どの部門に行っても、部下を育て、部下を使い、良い仕事をすることで、成果を生み出しているというのも事実なのです。