人事のススメ!

これからの時代に求められる人事の考え方を書き綴るブログ

これからのキャリアはこう考えよう!

キャリアとは?

例年1-3月は転職者が増える時期です。12月に賞与を支給する企業が多く、また事業年度が4月始まりの企業が多いことから、賞与を得た上で、事業年度始まりから転職しようという人が多いからでしょう。加えて、4月に人事異動を控える企業も多く、多くはその辞令を1月くらいから打診し始めることから、希望しない部署や職種への転換を迫られることや、希望していた異動が叶わなかったことを契機に、転職に踏み切る方も多いことでしょう。

そこでよく出てくるワードが「キャリア」だったり「キャリアアップ」という言葉ですが、転職を考える方はまさにこの「キャリア」について悩み、そしてキャリアを変更するという行動に踏み切るといったわけなのです。そもそも「キャリア」とはなんなのでしょうか? 「キャリア(Career)」は、日本語では「経歴」とか「経験」という訳され方をしますが、その語源は、ラテン語の「Carraria」という言葉だそうで、これは馬車などが通った道の後ろに残る「轍(わだち)」のことです。馬車の轍ができる場面を想像してみると、轍は車輪が通った後ろに残るもので、けして車輪の前にはできません。なので、正確には、キャリアの実態は過去にあるもので、「キャリアアップ」というように上げ下げを意味する「アップ」というのは、本来相応しくない言葉なのかもしれません。

ですが、将来どのような「キャリア(轍)」を描いていきたいという意味では、どういう道を選び、どういう馬車に乗り換えるかによって、その轍の残り方が変わってきます。もしかすると「キャリアアップ」よりも「キャリアデザイン」と言った方が、言葉の意味からするとしっくりくるようにも思います。過去に描いた轍の姿を履歴書や職務経歴書に整理・整頓した上で可視化した上で、次の馬車となる企業に、自分がどのような経験(轍)を描いてきたかを伝えるというわけなのです。

 

どのように、キャリアデザインするか?

面接をしているとよく「キャリアアップしたい」から転職志望するとの志望動機を聞きますが、企業側からするとこれではどのように「キャリアデザイン」しているのかが、よくわかりません。「キャリアアップ」という言葉は、一見ポジティブな言葉に見えますが、実は「私は成長したいです!」と叫んでいるのと同義なので、やはりどのような「キャリア」をデザインしているのかが、見えません。「なぜ山に登るのか?」と登山家に聞くと「そこに山があるから」という返事を受けたときに、なんだかモヤっとするのと同じです。「成長して、どういう感じになりたいの?」というゴールの設定し、どういう道を選び、どういう馬車に乗り換え、自身がどのように変化するのか、どのようにその轍の残そうとしているのかを、企業・面接官は聞きたいのです。それを聞いて「どうぞ僕らの馬車に乗ってください」と回答(=合否判定)するかを決めたいのです。

では、どのようにキャリアをデザインすればいいでしょうか? 当然ながら、設定したゴールから逆算し、どのような道を選び、どのような馬車を選ぶかを検討するのが一つの考え方です。さらに言うと、どのようにキャリアが積み上がるのかその過程を理解することで、道や場所の選択の仕方がより研ぎ澄まされてきます。前提としてキャリアの積み上がり方をまとめると、

 

  • キャリアは必ずあなたの通った後ろに出現します。
  • 既にキャリアが積まれていて、先端に現在の自分がいます。
  • 現在地からゴールまでに、どのようなキャリアが必要かを考え、計画する。
  • 計画を実行することで、新しいキャリアが積み上がり、結果として成長している。

 

これが、キャリアの一般的な描き方であり、どの道を通るか(=どういう生き方をするか)、どの馬車に乗るのか(=どのようは職業・企業を選ぶのか)なのです。

 

キャリアデザインがしにくくなった?

元も子もないことを言いますが、上記が2010年頃までの一般的なキャリアの描き方です。人生において、どのようなことを成し遂げたいかを想像し、その為にはどう生きるかを描き、その前提に沿って、職業・企業を選び、あとは実行あるのみというのが、2010年頃までの一般的な考え方だったわけです。なので、大学生の就職活動(職業・企業選び)は、極めて重要なイベントであって、その選択によって生き方が変わり、成し遂げたいゴールに近づくかが変わるというのが、これまでの考え方です。平たく言うと、この考え方が成り立たなくなってきました。大きな要因は2つでして、人の寿命が大きく伸びたこと、職業な企業の寿命が短くなったことに起因しています。例で言うならば、ゴールがより遠くになり、馬車が長持ちしなくなったというわけです。(このあたりは別記事「日本のサラリーマンなんてやってられない⁉︎」にも記載していますので、是非ご確認ください。)これにより、ゴールの設定はより難しくなり、馬車の乗り換え回数もより多く増えたということです。

これからはVUCAの時代ともよく言われますが、ゴールに向かっての道がどれが正しいのか分からなかったり、あると思っていた道がいつの間にか無くなっていたり、倒木や洪水により道が通れなくなってしまったり、そんなことがざらに発生することになるでしょう。乗っていた馬車もそうでして、最新だと思っていたのにすぐ型落ちしたり、倒木や洪水を乗り越え泳ぎ切れると思っていたのがそうでなかったりということも起きるでしょう。今までは、ゴールまでの道すじが分かっていて、一つの馬車に乗っていれば、そのゴールに辿り着く確率が高かったの全くそうではなくなってしまいます。こういう時代に大切なのは、最初からゴールや道すじを決めるのではなく、途中で道を変更することや、場合によっては行先・ゴールそのものを見直すことです。馬車も同じで、途中で違う馬車に乗り換えることや、場合によっては馬車に頼らず自分で歩くこと・乗り越えること・泳ぎ切ることも場面によっては大切になるでしょう。すぐに違う馬車に乗り換えるように手配しておくとか、最新の馬車やその道に合った馬車をその都度選択することも極めて重要です。究極的には、歩んでいる道や乗っている馬車に固執することなく、困難に遭遇したらもしくはもっといい道や馬車がいいと閃いたら、すぐ様に道や馬車を変更できる判断や機動力がモノをいう時代になったと考えた方が得策なのかもしれません…

 

キャリアを4回に分けて考える!

道(生き方)や馬車(職業・企業)の話は例えですが、実態としては現実に同じことが起きています。平均寿命は伸び、人生100年時代と呼ばれるようにもなりました。働く期間もおそらく将来的には60年とかに伸びることになるでしょう。一方で企業の寿命は短くなっていて、平均的には30年となりました。この計算に立つと、平均的には人生において2回以上職業・企業を経験することが当たり前になります。そうした時に、60年間同じ企業・同じ職業でいることの方がよほど少数派になるでしょうし、もしそういう人がいるならば、よほど転職に巡り合えたか、固執ししがみついているかのどちらかになるでしょう。人は残念ながら、歳を取り、気力・体力が落ちます。結婚・出産・離婚・介護等々のイベント如何によっても、考え方=生き方は大きく左右されるでしょう。60年間同じ生き方や職業・企業に固執するよりも、どうせ未来は分からないのだから、10-15年単位くらいで見直しするのはいかがでしょう? そうすれば、1回の就職活動で人生が決まるものだと考えるとか、転職すると今まで積み上げたキャリアが無駄になると考えるとか、これからの時代には不要となる考えを断ち切ることができるとも思います。一例ですが、20代は企業に就職しビジネスの基本を学ぶ、30代・40代は得たビジネスを活かし起業する、50代は学び直す、60-70代は個人事業主として地域に貢献するなどなど、様々なバリエーションが考えられます。何も最初から計画する必要はありません。前提として、4回くらいはキャリアを変えることを念頭に過ごしておいた方が、準備ができている状態が作れるし、仮に困難に合ったとしても速やかに行動に移せるのではないかと思うのです。そして、結果的には、幸福感の高い人生=ゴールにつながるのではないかと思うのです。

 

笑顔でいれば、可能性はきっと広がる!