人事のススメ!

これからの時代に求められる人事の考え方を書き綴るブログ

日本のサラリーマンなんてやってられない⁉︎

日本のサラリーマンなんてやってられない!

なんて言うと、皆さんはどう思いますか?

  • 同感です
  • 仕事があるだけ贅沢だ
  • 愚痴や不満なんて当然ある
  • 何をやっても一緒だ
  • フリーランスなんて不安定だ
  • 企業なんてリスキーだ

などなど、様々なご意見をいただきそうですね…。ですが、私が問題提起したいのは、けして仕事や会社での愚痴や不満ではなく、なぜにこれほど多くの方が疑いもせず、サラリーマンをやっているのか?という点です。僕自身もサラリーマン勤めの経験がありますが、正直漠然と就職活動をし、漠然と入社し、漠然とサラリーマンとして働いていました。言うならば、僕自身も何も疑いもせず、限りある人生をサラリーマンとして過ごしていたのです。今この記事をご覧いただいている方の多くも、きっと同じような状況にあることでしょう。

なぜに何も疑わないかと言うと、けして否定するものでもないですが、漠然と安泰だと感じているからなのでしょう。終身雇用は崩壊していますが、日本の労働法制では、よほどのことがない限り解雇されることはなく、楽しくはないかもしれないが、オフィスに出社して自席や会議に座っていれば、報酬が手に入ります。何もしなくても、人事が給与を計算してくれて、社会保険手続きもしてくれて、年末調整までしてくれます。楽ではあるのですが、実は多くの税金を取られているのにも、なかなか気づくこともありません。給与課税は国が容易に税収を得るために作られた仕組みでもあるので、当然ですが、税率が変わっても多くの方に知られないように勝手に天引きしています。仕組みも国が定めていて、自身でコントロールすることはできません。また、仮に給与が400万円→600万円→800万円→1,000万円と上がっていっても、なかなかその実感を得ることはできません。なぜならば、給与に比例し課税率・課税額が大きくなり、勝手に天引きされ、手元に残る可処分所得は、昇給した給与額ほど上がらないからです。さらに言うと、年々徐々に物価は上がり、消費税は3%→5%→8%→10%と徐々に上がっています。日本の平均的な昇給率は年2%ほどなので、課税額が上がり、物価が1%上がり、消費税が上がっている状況では、給与が上がっている実感どころか、実質的に使える価値の総額は下がっているというのが現実なのです。

 

サラリーマンは安泰か?

さて、どうでしょうか? これほど言っても多くの方は、でもやっぱりサラリーマンは安泰だからいいと思っているのが正直なところかと思います。でも、果たして本当に安泰なのでしょうか? 終身雇用が崩壊したと言っても、うちの会社は定年までは大丈夫だと思っている人も多いことでしょう。実態はどうかと言うと、皆さんもご存知の通り、社会の変化・ビジネスの変化はより一層大きく激しく移り変わっています。そのインパクトはインターネットが既存産業の垣根や概念を解体したことに大きく起因していますが、それ以外にも例えばですが、グローバリゼーション、温暖化、米中摩擦、高齢化、少子化、都市と地方の格差、世代間の価値観格差、新型コロナウィルスなどなど、社会が変化する・ビジネスが変化する要因は、複雑に多数あり、年々この変化のスピードは早まるものと推察されます。現状日本における企業の平均寿命(設立〜廃業)は30年だと言われています。おそらくこの平均寿命は、さらに短くなっていくことでしょう。一方、人の寿命は年々伸び、2019年度実績で、男性の平均年齢は81.41歳、女性は平均89.45歳となっていて(中央値では90歳)、約半数の人が90歳以上生きるのです(この結果自体は、医学・薬学の進歩なので、非常に喜ばしいことだと思っています)。人生100年時代と呼ばれるのもまさにこの所以でして、そうした時に何が起きるかというと、皆さんもご存知の通り、かなりの確率で年金制度が破綻します。年金は年齢構成の構造上、「平均寿命年齢-15歳」くらいを受給の開始タイミングにしないと成り立たない仕組みなので、実態的には年々年金の受給年齢は引き上がり、75歳にならないと受給ができなくなるのも、近い将来現実になることでしょう。さらには、平均寿命年齢がさらに引き上がれば、そして高齢化がさらに進めば(共に可能性は大)、75歳ではなく80歳くらいまでは受給開始年齢が引き上がることも多分に予測されます。何が言いたいかというと、寿命が伸びた分だけ、人は働く期間が長くなるということです。多くの方が80歳まで働く時代がすぐ近くまで来ているのです。

となると、計算は簡単です。企業の平均寿命は30年からどんどん短くなり、人の働く期間は60年(現状は40年ほど)からどんどんと長くなります。平均的に見ても、少なくとも人は人生の中で2回は企業を変えざるを得ず、さらにこの社数(転職回数)は増えていくことになるでしょう。さて、サラリーマンは安泰でしょうか? 皆さんは、人生の中で2〜3回職を変える準備ができていますか? もしくは、年金受給開始が80歳に引き上がったとしても、残り10〜20年生きられる蓄えを用意していますか? 今、僕たちが生きている世の中は、こういう実態にあるということを、まずは正しく理解しなければならないのです。

 

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日本の人事制度の実態

さて、このような実態にあるのですが、学校においても企業においても、現状を正しく伝えてくれることはなかなかありません。学校教育では「日本は自由主義経済である」と教えられていますが、実態は(税を多額納める)富裕層から貧困層へ富の再配分が行われていて、徐々に社会主義的になってきているとも感じます。超高齢化社会である近年においては、若年層が汗水かいて働き稼いだ金の多くを税金として蝕まれ、高齢者へ再配分されているというのが実態です。今の高齢者は、終身雇用・年功序列で、今の若者よりもずっと安定的な生活を送り、生涯報酬もよほど多く企業から得て、年金・退職金などの制度にも過保護に守られて、蓄えもかなりあるはずなのに…です。

さらに、企業でも同様のことが起きているのが実態です。正社員は労働基準法に守られ、解雇されることもなく、仮に成果を上げなかったとしてもある一定の報酬が確保されています。「成果を出す人」と「成果を出さない人」とでは、存在価値や価値発揮の大きさの差ほどは報酬格差はなく、いわば「成果を出す人」が「成果を出さない人」を養っている構造となっているとも言えます。最近では、報酬格差をつけるように人事制度設計を行う企業も増えてきていますが、総人件費には限りがあり、労働基準法最低賃金は定められている以上、極端な報酬格差はつけることはできず、やはり存在価値や価値発揮の大きさの差ほど、報酬格差はないというのが日本の人事制度の実態です。一つの例ですが、日本において、管理職と平社員の報酬格差は3倍程度だそうです。これを聞いて、皆さんは、差が大きいと感じるでしょうか? 小さいと感じるでしょうか? 金額差ではなく、存在価値や価値発揮の大きさの差と比較して、どう思うでしょうか? もしかすると、適切もしくは大きいと感じる人もいるかもしれません。その人の所属する企業ではきっと管理職は何の存在価値も実質的にないのでしょう。それも、その方を管理職に任命した、日本企業の人事制度の弊害でしょう。まだまだ年功序列な制度は残っており、実力主義とは名ばかりの企業もたくさん残っているというのも事実です。ちなみに、グローバルでみると、管理職と平社員の報酬格差は8〜10倍だそうです。この数字は、欧米だけではありません。シンガポールを筆頭に、アジア諸国でもこの水準なのです…

 

日本のサラリーマンなんてやってられない?

さて、ここまでお読みいただいていかがでしょうか? 冒頭でサラリーマンは安泰だと思っていた人も、少しは現実を理解し、何か響いていれば、嬉しく思います。で、どうするかが重要だと思いますが、正解はありません。この記事を読み、フリーランスになろうとか起業しようと考えた人もいるでしょうし、今の企業にしがみつくことなく外資系企業に転職しようと考えるのも一つだと思います。日本よりも税制負担の少ないシンガポールなど他の国に移住しようというのも一つの正解かもしれません。正解は一つではないですが、ただ何も考えず、漠然と人生を過ごすということだけは、明確に間違いであり、やめた方がいいと申し上げておきます。最近ではフリーランスの方も増えましたし、副業を解禁する企業も増えてきました。日本の企業も徐々にではありますが(スピード感は非常に遅い)、80歳まで雇用しなければならないことを考えると、流石に抜本的に人事の在り方・報酬の在り方を変えなければならないというところまで、もう目の前にきています。企業が掌を返して、ジョブ型にシフトするとか、無期雇用を廃止するなんてことも、起こりえるかもしれません。そうなる前に、是非自分で考え、自分で行動することをオススメします。(健康寿命も伸びていますが)残念ながら、人は必ず老いがきます。後悔しないように、気づいた時には時すでに遅しとならないように、限られた人生を有意義に過ごしてください。

一方、企業で人事を担っている方はどうお感じでしょうか? 同じように、企業の平均寿命が短くなる可能性が高いこと、80歳まで雇用しなければならないことを意識して、今の人事の仕組みで本当に正しいのかを見据えておくことが、それこそ所属企業の平均寿命の伸ばすことにつながります。社員にとって魅力のない企業・エンゲージしない企業には「成果を出せる人」は来てくれないですし、居続けてくれないことでしょう。「成果が出せない人」ばかりが、しがみつき80歳まで居続ける企業となってしまうリスクを想像してみてください。そんな企業は、確実に変化に対応できず、淘汰されてしまうことでしょう。成果に応じた報酬体系となっているか、新陳代謝が謀れる仕組みとなっているか、やれることはたくさんあります。誤解を招かぬように補足しますと、高齢者を排他しようという趣旨ではありません。最近、人事界隈で流行でもある「健康経営」の本来の趣旨は、社員が加齢しても健康で成果を出し続けられるように施策を打つことが、本質です(その先には、税収を長く納めてくれるというのが国の趣旨)。社員に対し、副業を認めるというのも一つの社員ファーストな考え方かと思いますし、今まで以上にフリーランスの方を活用していくというのも一つの案です。現状に安住せず「成果が出せる人」を採用・維持できる仕組みを作り始める契機となれば、嬉しい限りです…

 

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